執筆された本の一部です。
みんなに知って欲しくなるユニークな同窓生、
がんばってる同窓生を紹介します。

第5回
 
  銀行マンから横浜国立大学大学院教授に
                  山口 修さん
(11期)

 
「人間万事、塞翁が馬」を実感する半生でした



「7組の山口、横浜国立大学の教授やねんで」
「えっ? 銀行に勤めてるんちゃうかった?」
という同級生との電話で知った山口さんの転身、
それにしても銀行員から大学教授って珍しいですよね。

『銀行マンから大学の教授? そこにはどんなドラマがあったんだろう?』
俄然知りたくなりました。

ということで今回は、学会で来阪された山口さんのインタビュです。
場所は十三にある淀川区民センター、同行者は事務局の松本さんでした。

この取材が決まった時、山口さんにお願いして資料を送ってもらっていました。
彼の専門は「企業年金」です。
俄か勉強では役に立たないかもしれないけど、また「企業年金」の取材ではないけど、
山口さんのバックボーンを知っておきたくて、がんばって分厚い資料全てに目を通しておきました。

そこで感じたのは、1999年からの企業年金制度の劇的な変化と山口さんの動向が、
密接に絡み合ってるということでした。

          ※「人間万事、塞翁が馬」とは「福は禍の原因となり、また禍は次の福の原因になる」という中国の故事


       最初の禍は阪大の数学科に進んだこと


11期生の山口さんとは同級生です。
高校時代からの彼を知っています。とにかく頭の良い方というイメージでした。
なので、大学の教授になられたこと自体はびっくりしませんでした。
「順風満帆ですね」と水を向けると、
「いえいえ、自分の人生は『禍福は糾える縄の如し』でした」
と言われた事の方に、驚きました。

縄目のように、福と禍が交互にやってきた、と言われるのです。

−では、最初の禍福とは?

まあ、禍福という表現はちょっとオーバーかも知れませんが、高校時代の数学好きが嵩じて、
大学で数学を専攻した事が最初の誤りでしたね。

−でも、数学得意だったようですけど?

確かに数学は大好きでした。
数学の問題を解くのが面白くて、今で言うところのゲーム感覚で次々問題を解いていました。
学校の問題集などは早く終わってしまうので、確か数学の中井先生だったと思うのですが、
3
次方程式の解法(カルダノの方法)を書いた代数のテキストなどを読ませて頂いたこともありました。
高校時代は、いつの日か数学者になって大学教授という職業に就ければいいなあという
漠然とした憧れ
を持っていた様に思います。

−大学の数学は違っていた?


そうです。大学の数学科では問題を解くことはせずに、この問題の解は存在するのか
といったことを考える訳です。
抽象化、普遍化が極度に進んだ現代数学は
私の好きな現実社会との繋がりが感じられる暖かみのある数理の世界とは全くちがっていました。


大学に入ってすぐに自分の選択の誤りに気が付きました。
もっと具体的、実践的に数学を使う分野はないかということで、
経済学部に転部することも考えましたが、
折からの大学紛争と高校時代の猛勉強の反動があったためでしょうか、

ぐずぐずと決断ができず、そのまま理学部に在籍していました。
それと阪大の数学科は全学で一番卒業のための履修単位数が少ないという利点(?)
もあったため、結局は楽な道を選んだということかも知れません。
しかし、せめてゼミだけは具象的な世界に近いものをやりたいということで、
基礎工学部の推計学(推測統計学)の先生のところで勉強させていただきました。

−無事4年で卒業されました?

数学の世界では学部レベルで少し勉強した位ではまともな論文は書けないということで、
阪大の数学科では伝統的に卒論がありませんでしたので、
講義での必要単位数を揃えるとトコロテン式に卒業ということになりました。
この時、口の悪い先生が、「(できの悪い)君達を留年させるのは国費の無駄使い」だと
言っていました。

 


略  歴


1972
3月 大阪大学理学部数学科卒業


19724月 住友信託銀行(株)入社
19967月 同行 年金運用部長
19999月 同行 理事・本店支配人(年金担当)
        兼 年金研究センター研究理事
20014月〜20039
         横浜市立大学商学部非常勤講師
           (「金融機関論」を講義)

2002年7月 住信パーソネルサービス(株)
           常務取締役

20034月〜20053
      中央大学大学院客員教授(非常勤)
           (「年金と保険」を講義)

20034月〜20053
      東京工業大学大学院
          社会理工学研究科非常勤講師

20044月 横浜国立大学経営学部教授

公  職

(社)日本年金数理人会相談役
厚生労働省独立行政法人評価委員会年金部会長
社会保障審議会年金部会委員
社会保険庁業績評価有識者会議委員

所 属 学 会

日本年金学会
日本経営数学会
日本アクチュアリー会
日本年金数理人会

 


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